オオカミの呼ぶ声 番外編SLK 第8話 SLK5 咎人


夏。
虫取りという名目で子供たちを集め、その子供の一人、ルルーシュ・ランペルージを誘拐し、井戸の底へ拉致監禁したとして、扇要とそれに協力した小学生が捕まった。
スザクは化け物だ。
人語を話し、人に化け、人を騙す獣。
悪魔と言ってもいい。
その存在を消し去らなければならない。
皆、あの化け物にだまされているのだ。
それが彼らの主張だった。
最初、警察官はそんな夢物語をと呆れたが、この近辺の住民は皆スザクの存在を信じており、この事件で重傷を負った犬神に祈りを捧げるため、連日多くの人々が神社に参拝に訪れる姿を見て、笑い飛ばす事が出来なくなった。
そして暫く後、日本の皇を守護するカグヤの口添えもあり、上層部からの働き掛けでスザクの存在は警察署内でも認められることとなった。
古くからこの地を守護する土地神にして犬神。
穢れを生み出す枢木の地の楔としてこの地に縛られている守り神。
その存在を否定し、口汚くののしり、重傷を負わせた一味として、彼らは未成年でありながらも罰を与えられた。
首謀者とみられるブリタニア人と、スザクを銃で撃った咎人は、神々の中でも特に枢木の地に縁のある若き神の使い達が裁き、心身ともに衰弱した姿で数日後発見された。
何をされたかは解らないが、よほど恐ろしい目に会ったらしく、その頭髪は白くなり、顔は恐怖で歪んでいたと言う。今は三人とも病院に入り、再び神に捕まる事を恐れ怯えているとか。
そこまで話して聞かせた時、スザクは首をかしげ、眉を寄せた。

「枢木の地に縁のある若い使いって誰だ?」
「さあ、それは私にも解らないが、カグヤ様が言うにはスザク君の関係者だと言う話だったが」
「俺の?そんな奴居ないはずだ」

スザクの関係者はカグヤだけ。
そしてこの地でスザクとカグヤより若い神は生まれていないはずだ。
何よりこの地の守護であるスザクに神の御使である使徒はいない。
使徒となれば、長い時を共に生きていられる様になる。
ルルーシュを、できればカレンも、と考えてはいるが。

「・・・そうか。なら向こうが一方的にそう思っているのかもしれないな」

何だそれ?と、スザクは眉を寄せて呟いた。



今は正月。
三が日が終わるまで神社に居てほしいという藤堂の頼みで、スザクは拝殿に腰掛け、参拝に来た人たちに拝まれていたが、カレンが親せきの家巡りを始めてしまいあまりにも暇だったため、暇つぶしに藤堂から自分が寝ている間の話を聞いていたのだ。
だが予想通りどれもこれもあまり面白い話では無かった。

「まあいいや。扇はもうここに居ないのか?」

大事なのはそこだと言いたげに、スザクは藤堂に尋ねた。
ルルーシュとカレン、そして藤堂の居場所は領域内に居れば解る様にしているが、扇なんて気にもしていないから自分の領域に居るかどうかは解らないのだ。

「あれだけの事をしてしまったから、紅月さんの所でももう預かれないという話になって、両親が居る青森に引っ越す事になっている。他の子供たちももうこの近郊には住めないから、引っ越して行ったよ」

扇はまだ少年刑務所に居るから、そこを出てからだが、他の子供たちはまだ小学生という事もあり、保護観察処分となっていた。
人々の冷たい視線を浴びながら、夜逃げするように出て行ったという。

「だが、カグヤ様のお話では、土地神にあれだけの事をしたのだから、他の土地に移り住んでも、その土地の神には見放される事にはなるだろうと言う事だ」

それはつまり、普通の人たちよりも困難で不運な人生を歩むと言う事だ。
スザクとも顔見知りの神なら彼らに軽度とはいえ祟りや障りを起こす可能性もある。
だが、スザクは彼らに同情する事はなかった。
何せ被害にあったのはスザクだけではなくルルーシュもだからだ。

「なんだ。この土地に居れば、俺がやれたのにな。あいつら、俺がルルーシュを襲って殺した事にするつもりだったんだ。そしてルルーシュを飼うつもりだって言ってた」
「飼う?ルルーシュ君をか?」

スザクのその言葉に、藤堂だけではなく、スザクの話に耳を傾けていた氏子たちが驚き、ざわめいた。

「ルルーシュは子供だけど美人だから、自分の手元で飼うって。人間が人間を飼うって何考えてたんだあいつ」

そういえば、夏祭りの時にもルルーシュを誘拐しようとしていた男がそんなことを言っていたなと思い出す。
飼うってペットに対して使う言葉だよな?と、小首をかしげながらいうスザクに、周りに居た大人たちは冷や汗を流した。
いや、それは多分・・・と思いつつも、誰もスザクにその事を告げる勇気はなかった。
もしその事を知れば、スザクは間違いなく烈火のごとく怒り狂い、今病院に居る者たちに間違いなく災いを起こすだろう。
彼らがどうなってもそれはスザクを傷つけたのだから仕方ないと思うのだが、あまりこの犬神に祟りは起こして欲しくはないのだ。
人間嫌いのこの神がまた姿を隠しても困る。
障らぬ神にたたりなし。
その言葉を皆心に思い浮かべた。
その後、出所した扇は進学を希望していたが、どこの大学にも合格できず、就職してもすぐ首になり、アルバイトをしても失敗続きで追い出され、軽度ではあるが事故に巻き込まれ続けた。
道を歩けばカラスやスズメに襲われ、犬には吠えられ、猫には噛みつかれ、少し屈めば痴漢と間違われ、親切心で荷物を運ぼうとすれば泥棒と叫ばれる。
これはすべてスザクの仕業だ。もう外に出たくないと、何もしていないスザクを恨み、引籠る息子をどうにかしたいと、両親が何度も枢木神社を訪れ、スザクの怒りを解くため拝殿に向かい土下座をするのはもう少し後の話。

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